
長く快適に暮らしていくうえで、今は良いものの高齢になる時に備えて、いつかバリアフリーリフォームを行った方が良いのではないか、と考える方は少なくありません。しかし、現段階で元気な場合は特に、バリアフリーの必要性を感じないため、急いでバリアフリーリフォームを行う必要はないと思うものです。
では、バリアフリーリフォームはいつするのが良いのでしょうか?ベストタイミングはあるのでしょうか?バリアフリーリフォームに対する考え方や、タイミングの目安を考えるうえで役立つポイントをご紹介したいと思います。
1. バリアフリーリフォームって何のためにするの?
そもそもバリアフリーリフォームとはどのようなリフォームなのでしょうか?また、介護保険住宅改修とは違うのでしょうか?まずは、バリアフリーリフォームに関してご説明したいと思います。
■バリアフリーリフォームって何?
バリアフリーとは、生活の中でバリア、障壁となっている部分を取り除くことを指しています。このバリアには段差などの物理的な障壁だけではなく、心理的な障壁も含まれています。今あるバリアを取り除くための工事をすることがバリアフリーリフォームです。
家の作りやそこに住む人によって、何がバリアとなるかは異なります。バリアフリーといえば高齢に伴って行うものというイメージがあるかもしれませんが、段差や手すりの高さなど、幼い子供や子育てする親にとってバリアになることもあり、年齢は限定されません。
住む人が変わればバリアと感じない部分や、年齢に伴って変化する部分もあり、快適な暮らしを手に入れるためのバリアフリーリフォームは、他のリフォーム工事と同様、そこに住む人に合わせたオーダーメイドな工事となります。バリアフリーリフォームを行うタイミングも自由に決めることが出来ます。
■バリアフリーリフォーム=介護保険住宅改修ではない!?
バリアフリーリフォームというと、中には助成金が受けられる『介護保険住宅改修』をイメージする方は少なくありません。そのため、バリアフリーリフォームを行う際には、助成金を申請出来ると思っておられる方もいらっしゃいますが、介護保険住宅改修工事の内容にバリアフリーが含まれるというだけで、バリアフリーリフォーム=介護保険住宅改修というわけではないので、注意が必要です。
介護保険住宅改修とは、介護保険制度に基づいて要介護・要支援認定を受けている方に対して、ひとり20万円分の給付限度額の範囲内で、介護に関係する住宅の工事、「住宅改修(リフォーム工事)」を行うことを指しています。
助成金を受けることが出来る工事内容は下記の通り決まっています。
・手すりの取付け
・段差の解消
・滑りの防止及び移動の円滑化等のための床または通路面の材料の変更
・引き戸等への扉の取替え
・洋式便器等への便器の取替え
・その他上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
この通り、工事内容の多くは、一般的にバリアフリーリフォームと呼ばれる内容と類似しています。そのため、介護保険住宅改修のことを指してバリアフリーリフォームと呼ぶ方もいらっしゃいますが、正式には別ものなので、介護保険の認定を受けていない方が、この工事を行っても、助成金を受けることは出来ませんし、認定を受けている方であっても手続きを行わなかったり、対象の工事内容以外のものだったりすれば、助成金は使えません。
ただし、介護保険の認定を受けている方以外を対象としたバリアフリーリフォームの助成金制度を設けている地方自治体もあります。被保険者以外であっても、助成金や補助金を活用できないか、バリアフリーリフォームを行う前に確認してみましょう。
2. バリアフリーリフォームのベストなタイミングとは?
家の劣化のように分かりやすくリフォームが必要な場合とは違うバリアフリーリフォームは、どのタイミングで行うのが良いのか悩むことがあります。バリアフリーリフォームはいつするのがベストなのか、目安となるポイントをご紹介したいと思います。
■関係するリフォームとセットのタイミングで!
生活していく中で、『この段差さえ無ければラクなのに』、『ここに手すりがあれば安心なのに』など、不便さを感じたり、リフォームすることで快適になることが明確に分かったりしている点に関しては、出来るだけ早くリフォームするのが良いタイミングと言えます。
しかし、気になる点が出てくる度にバリアフリーリフォームをしてしまうと、お金や時間ばかりがかかってしまいます。また、バリアフリーリフォームだけをまとめて行おうとすると家の色んなところをリフォームする必要が出てきてしまい大掛かりになってしまう場合もあります。
そのため、家を維持していくうえで必須となる、劣化に伴ったリフォームを行う際に、関係する部分のバリアフリーリフォームも行うのがベストなタイミングです。例えば、床材を張り替えるタイミングで段差を無くす工事を行ったり、壁のクロスの張り替えを行うタイミングで補強を入れて手すりを取付けたり、トイレリフォームのタイミングで開き戸を引き戸に替えたりするバリアフリーリフォームを行えます。さらに、間取りを変えるような大掛かりなリノベーションを行う際には、家全体のバリアフリー化を行うタイミングです。
日ごろ不便さを感じている部分、バリアになっていると思う部分をピックアップしておき、リフォーム会社の担当者に、どのリフォームとセットで行うことが出来るのか、タイミングやリフォーム内容を確認しておくことで、工事の二度手間を防ぐことや、費用を抑えることが出来ます。
ただし、介護保険の認定を受け、介護が必要となっている場合や、既に転倒の危険があったり、子育てや介護しづらかったりする場合は、家の劣化を待ってから行うよりも、出来るだけ早くバリアフリーリフォームを行う方が快適で安全です。
■体力や体調に合ったバリアフリーリフォームが大事
バリアフリーリフォームを行う方の中には、バリアフリーを意識しすぎた結果、作り込みすぎて、体力や体調に合っておらず生活が不便になったり、特定の病気や老化が進行する度に工事が必要になったりした、という失敗例があります。
例えば、バリアフリーにするために段差を無くすことが必要だと思い、全ての段差を無くしてスロープを設けたものの、スロープの方が体のバランスを支えることが難しく、転倒しやすくなる場合もあります。床がフラットで、足腰の筋力を使わないため、衰えを感じるようになったというケースもあります。建築基準法では、安全に暮らすための基準となる段差の一般的な高さや幅などの寸法が定められています。そのため、大きな段差ではない限り、建築基準法で定められた範囲の高さでの段差に関しては、スロープにしなくとも問題ないかもしれません。また、スロープにせずとも手すりを設けるだけで十分な場合もあります。
健康なうちに、将来に備えてバリアフリーリフォームを行うことは出来ますが、体力や体調、病気や老化の進行状況は人によって異なるので、急ぎすぎないことや、誰にとっても必要な部分の工事だけにとどめておいて作り込まないことが重要です。
3. まとめ
生活の中でバリア、障壁となっている部分を取り除くための工事を行うバリアフリーリフォームは、高齢化に伴って行うものというイメージがあるかもしれませんが、年齢に関係なく、快適な暮らしの障壁となっているものを取り除くために行う工事で、家や住む人に合わせたオーダーメイドな工事と言えます。そのため、バリアフリーリフォームを行うタイミングも自由に決めることが出来ます。暮らしの中でバリアと感じる部分があるのであれば、出来るだけ早い段階でリフォームするのがベストですが、工事期間の短縮や費用を抑えるために、劣化に伴うリフォームとセットで行うことがおすすめです。また、病気や老化の進行具合は人によって異なるので、作り込みすぎず体調に合わせてリフォームすることも大切です。
バリアフリーリフォームはオーダーメイドで行う工事なので、暮らしに合った内容とタイミングで行いましょう!



