家事動線が良い家=回遊導線がある家、と言われるぐらい、家事に特化した間取りとして回遊導線は人気です。リフォームやリノベーションでも、なんとか回遊導線に出来ないかと、間取りを試行錯誤している方も増えています。しかし、あんなに頑張って考えたにも関わらず、いざ住みだすと回遊導線はあまり意味が無かった、むしろ良くなかったとさえ感じておられる方もいらっしゃいます。
家事動線を良くするために、回遊導線を取り入れる効果は本当にあるのでしょうか?後悔を招かないための間取りを考える際のポイントをご紹介したいと思います。
1. 回遊導線で後悔する場合もある!?
家事動線の良い間取りにするうえで、まずは回遊導線を取り入れたにも関わらず後悔を招いた方の原因に注目してみましょう。
■収納スペースが無くなった!
回遊できるようにするためには、大抵の場合、部屋の中に開口部が2か所以上出来ることになります。そのため、家具を置いたり、収納スペースや棚が設けられなかったりして、動線が良いわりには収納する場所が少なく片付かない家になってしまったという失敗例があります。中には、収納ラックを置くために回遊導線のために設けたドアをつぶして、収納スペースを確保しなければいけなくなったり、導線上にモノが散乱してスムーズに通れなくなったりしたという、本末転倒なケースもあります。
またドアが多いせいで、手すりが取り付けられず、安全に行き来しづらい導線になってしまったというお宅もあります。回遊導線にして開口部が増えることや、壁の面積やスペースが圧迫されることで、どんな影響があるのかを考えておくことは大切です。
■風通しが良くオープンすぎるのはデメリット!?
開口部が多いということは、その分どこからでも出入り出来るようになるため、プライバシーが守りにくい、オープンな空間になりやすいというデメリットもあります。
特に脱衣所では、2箇所のドアを意識しなければいけず着替えにくいと感じたり、鍵を閉め忘れてしまったり、風通しが良すぎて寒いと感じたりする後悔もあります。開口の位置やドアの種類によっては、来客者から洗面所やランドリールームなどのプライベート空間や家事空間が見えやすくなる場合もあります。
また、キッチンからランドリールームへの回遊導線があるお宅では、家事はスムーズになったものの、料理の匂いがランドリールームに流れてしまい、洗濯物への臭い移りが気になって干しにくいというケースもあります。人が行き来しやすいということは、空気も行き来しやすいということでもあるので、臭いや冷気などの影響も意識しておく必要があります。
2.回遊導線が無くても家事導線は良くなる!?
回遊導線の失敗例が自分の家にも当てはまりそうだと感じた方は、回遊導線にこだわらずに、他の間取りを考えた方が暮らしやすい家にすることが出来るかもしれません。家事が捗る家にするために、動線のどんな点を意識すると良いのかをご説明したいと思います。
■より短く・より直線で引ける動線か!?
家事動線の良い間取りかどうかを考える際には、間取りを数プラン平面図で出したうえで、実際に家事で通る導線を図面上に線を引いて確認してみましょう。
洗濯や料理、掃除などの家事ごとや、住んでいる人ごと、時間ごとなどを色分けして線を引いてみると、誰がどこをよく通るのか、誰とどの時間に重なるのかなどが視覚的に分かるため、プランごとに比較しやすくなります。
動線を考える際には、線が出来るだけ直線で短くなるように、どの部屋とどの部屋が近いと便利なのか、部屋を動かさずとも、部屋の広さを変えたり、収納の位置やドアの位置を変えたりするだけで動きやすくならないのか、細かく検討してみることで、家事動線だけではなく、暮らしやすいベストな導線が見えやすくなります。
回遊導線を作ったお宅でも、意外と一か所のドアから出入りしたり、同じ場所を行き来したりして回遊せずに家事を行っているという方も少なくありません。また、回遊出来ることばかりを意識しすぎて動線が長くなっている場合があります。そもそも回遊出来ることのメリットは、キッチンからダイニング、キッチンからランドリールームなどの家事を行う空間へのアプローチが近くなることにあります。回遊出来ない間取りであっても、家事空間同士が近く、繋がっている間取りにさえなれば、家事動線はスッキリ短くなります。
家事の方法や動きの癖などは人それぞれなので、図面上で確認しつつ、自分や家族の動きに合った動線を分析しながら間取りを考えていくことは大切です。
■空間ではなく動作ごとに考えるのもアリ!
家事動線を意識して間取りを考える際には、部屋や空間ごとの繋がりに注目しがちですが、部屋丸ごとの配置ではなく、動作ごとに考えることも効果的です。
例えば、キッチンの横にランドリールームを設けるよりも、キッチン内やキッチン横に洗濯機だけを設置できるスペースを設ける方が、部屋との行き来を減らすことが出来るかもしれません。また、脱衣所内に洗面所を設けるのではなく、廊下に洗面化粧台を設けることで、家族の動線が重なることを防げるかもしれません。
洗濯機はランドリールームにあるのが当たり前、洗面化粧台は脱衣所にあるのが当たり前と思わずに、設備機器は特に、『ここにあると便利なのに』、と思える位置に設置することで家事動線を良くすることが出来る場合もあります。
3. まとめ
家事動線の良い間取りとして人気の回遊導線ですが、回遊導線を取り入れると必ずしも暮らしやすい、動線の良い家になるとは限りません。回遊導線にして開口部が増えたことで、収納スペースや手すりを設ける場所が確保出来なくなったり、オープンになりすぎて、プライベート空間が来客者から見えたり、料理の匂いが流れてしまったりして後悔したという失敗例もあります。家事が捗る家にしたいのであれば、回遊導線にこだわるのではなく、自分や家族の動きを図面上に線を引いて把握し、部屋の繋がりや、家事の繋がりを意識することで、家事動線が短く、スムーズに動ける家にすることが出来ます。また、設備機器などは、ここにあるのが当たり前とは考えず、オーダーメイドで行うリフォームやリノベーションだからこそ、ライフスタイルにあった配置や間取りづくりを意識しましょう。
回遊導線にこだわるのではなく、自分らしい暮らしにこだわって家事動線の良い家づくりを行いましょう。