最近、「リノベーション」という言葉をよく耳にします。雑誌でも、「リノベーション」の特集が組まれるようになりました。しかし、「リノベーション」という言葉の意味は、まだ定着したとは言えません。実際にその意味を説明できる方は少ないのではないでしょうか。
「リノベーション」と混同されがちなのが、「リフォーム」です。どちらも似たような意味で使われていることがありますが、実は全く異なるものです。
どちらも、古い住まいに手を加えることは同じですが、その目的が違います。それぞれの言葉の意味を解釈しながら考えてみましょう。
「リフォーム」は、言葉を分解してみると、「re + form」になります。形(form)を元に戻すという意味合いが強く、老朽化した住まいを建築当初の性能に戻すことを指します。つまり、原状回復するということです。老朽化し、マイナスになった状態を元に戻して最初のゼロの状態に戻すのが、「リフォーム」です。
具体的には、古くなったユニットバスやキッチンを、取り替えたりすることが該当します。以前のものと比較すると、ユニットバスには暖房乾燥機が付いていたり、キッチンには食洗機が付いていたりと、設備の性能は向上しているでしょう。しかし、お風呂の場所も、キッチンの場所も、変わりません。その場所の用途は変化しないのです。このように、その場所の用途は変更せず、部品交換をするようにキレイにするのが、「リフォーム」です。
「リノベーション」は、言葉を分解してみると、「re + innovation」になります。この言葉には、住まいの原状回復だけでなく、作り替える、刷新する(innovation)といった意味があります。
つまり、老朽化した住まいのマイナス部分の修復をしてゼロの状態に戻すだけではなく、さらにプラスαの新たな付加価値をつけるのが、「リノベーション」です。
住まいに付加価値を付けるためには、現代の私たちの暮らしのニーズに応える必要があります。そのためにはまず、私たちの暮らし方の変化について考えてみると良いでしょう。
「2LDK」や「3LDK」など、家の広さ感や部屋数を簡単に示すときによく使われる「nLDK」という呼び方が生まれたのは、戦後の住宅公団アパートが建設された頃だと言われています。
「nLDK」とは、「n」は部屋の数、「L」はリビング、「D」はダイニング、「K」はキッチンを示しています。例えば、「2LDK」は、個室が2つ、リビング、ダイニング、キッチンという部屋の構成となっています。
戦前の日本では、茶の間で食事をして、就寝もするというように、同じ場所を多用途に使っていました。しかし、「nLDK」という考え方が生まれ、食事する場所はダイニング、寝る場所は寝室という「食寝分離」の暮らし方が定着しました。現在でも、「食寝分離」の生活は続いていますが、この考え方が生まれた当初と比較すると、私たちの暮らし方は大きく変化しています。
例えば、リビングで家族全員が揃ってテレビを見ることは少なくなり、テレビを見る人がいたりパソコンをしている人がいたりと、同じ空間にいながら別々のことをするようになりました。また、かしこまった来客も少なくなり、客間の利用頻度も少なくなりました。そこで、最近の住まいは、従来のように細かく仕切るのではなく、リビングスペースを大きくしたり、リビング・ダイニングスペースにスタディコーナーを作ったり、リビング横に畳コーナーを作ったりしています。
このような私たちの暮らしの変化に合わせて、古い住まいを作り替えるのが、「リノベーション」です。例えば、納戸だった場所を書斎にするなど、部屋の用途や機能を変更したり、「3DK」の家を「1LDK」にするように間取りを変更する大規模な工事になることが多いです。
「こういう暮らしがしたい!」と、自分に合った暮らしを一から作ることができるのが、「リノベーション」の最大のメリットです。
「リノベーション」が活躍するのは、住まいに限ったことではありません。廃校になった学校を福祉施設にして地域全員が利用できるようにしたり、空室が目立つオフィスビルをマンションにしたりと、さまざまな場所で「リノベーション」が行われています。
このように、「リフォーム」と「リノベーション」は、目的が全く違います。
簡単に言うと、住まいの改修をするのが「リフォーム」で、暮らし方の改修をするのが「リノベーション」になります。
工事規模を比較すると、「リノベーション」の方が大規模になることが多く、工事費用も高くなります。しかし、自在に部屋の大きさを拡大・縮小させたり、部屋の用途を変更したりと、現代の私たちの暮らしのニーズに合った住まいへと変化させることができるため、資産価値は高まります。
部屋の間取りには満足しているけれど、新しい機能を持った設備が欲しい場合には、「リフォーム」を、暮らし方を根本から見直して住まいづくりをしたい場合は、「リノベーション」を選ぶと良いでしょう。
今の暮らしをより快適に、素敵にしたいとお考えの方は、一度ご相談・お見積だけでもいかがでしょうか?