世田谷区には、区面積の約1%にあたる58.7ヘクタールの準工業地域がありますが、その中でも桜新町2丁目は、区内最大の準工業地域があります。そんな桜新町を、世田谷区では『住工共生』の、ものづくりのまちのモデル地区として推進しています。しかし、そもそも準工業地域とは何でしょうか?
現在世田谷区にお住まいの方や、世田谷区や桜新町で家探しをしている方に知っていただきたい、準工業地域と住宅やリフォームの関係についてご説明したいと思います。
1. 住工共生のまち『準工業地域』ってどんな地域?
世田谷区桜新町2丁目にある、準工業地域とはそもそもどんな地域なのでしょうか?住宅は建っているのか、この地域にはどんなメリットがあるのか、ご説明したいと思います。
■準工業地域って何?
準工業地域とは、都市計画法上の用途地域のひとつで、中小企業の振興や育成を目的とした地域です。工場の建設が可能であるものの、一般的にイメージされる工業団地や工場地帯とは違い、防火上の危険があるものや、住環境を損なう危険がある工場を建てることが禁止されている地域なので、工場でも中小サイズのものが中心で、準工業地域の多くは、戸建やマンションなどの住宅も建ち並んでいます。
また、工場や住宅以外にも学校や幼稚園、商業施設、遊戯施設、病院、老人ホームなど、多目的な用途の建築物を建てることができる地域です。むしろ、危険性や環境悪化の恐れが大きい工場、火薬・石油類の貯蔵や処理を行う施設以外の建物はほとんど建設可能な地域と言えます。
■準工業地域に建つ住宅のメリットとは?
準工業地域は住宅系の地域とは違い、商業施設や学校なども建てられるため、利便性の良い地域になります。しかも、利便性が高い地域のわりには、他の用途地域に比べて土地価格が割安というメリットもあり、準工業地域内で賢く選べば、立地環境が良い家を安価で手に入れることが出来るかもしれません。
また、準工業地域の土地では建ぺい率が50%・60%・80%の3段階に設定されているため、30~60%(10%刻み)の制限がある住居専用地域よりも、敷地に対して広い建物を建てやすい地域が多いというメリットもあります。
さらに、家の身近な場所にものづくりを行っている環境や人が多く、子ども達にとっては、幼いころから見たり感じたりが出来て、ものづくりの関心を高め、学びの場となる良い環境といえます。特に桜新町では、ものづくり事業所と住宅が共存するまちづくりを推進するために、年に一回、ものづくりの魅力発見ツアーが実施され、小学生を中心にツアーを楽しんでいます。(住工共生まちづくりの取り組み | 世田谷区公式ホームページ)
2.準工業地域に建つ住宅のリフォーム事情とは?
住宅を建てることが出来る準工業地域ですが、リフォームに関する制限や、この地域だからこそ意識しておきたいリフォーム項目があります。準工業地域ならではのリフォーム事情を、ご紹介したいと思います。
■店舗兼用住宅・店舗併用住宅にリフォーム出来ない!
準工業地域は、様々な用途の建物を建てることが出来る地域ではありますが、店舗併用住宅と店舗兼用住宅に関しては建てることが出来ません。店舗併用住宅とは住宅と店舗が内部で繋がっておらず完全に区切られていて、行き来ができない造りになっている住宅です。店舗兼用住宅は、住宅と店舗が屋内で繋がっていて、行き来が出来る造りの住宅です。
行き来が出来るかどうかに関係なく、準工業地域では店舗と住宅を兼ね備えた建物を建てることが出来ないので、自宅の1階やひと部屋を店舗にリフォームしたいと思っても、建築基準法に基づいて行えません。
自宅内にワークスペースを作ってテレワークや作業を行うことは出来ますが、店舗として出店することは出来ないので注意しましょう。
■騒音対策を意識したリフォーム
住宅を建てることが出来る地域とはいえ、住宅系の用途地域と比較すると、工場や商業施設からの騒音リスクがあります。そのため、防音対策を意識したリフォームを行う必要があるかもしれません。
特に、隣が空き地になっていたり、建て替えの可能性が高い場所だったりすると、工場や商業施設が建つ可能性も考えられます。道路に面していれば、トラックなどの騒音もあります。そのような場合は、一般的な生活音よりも騒音が大きくなる可能性があるので、窓リフォームや壁リフォームの際には、意識して音対策を行いましょう。
例えば、サッシや壁材を選ぶ際には、遮音等級が高いものを選んでリフォームを行うと効果的です。内窓を設けたり、複層ガラスを用いたりすることが出来ます。また、遮音下地パネルを壁に入れることも出来ます。音が入りやすい換気口には、防音換気口を設置することも出来ます。
3. まとめ
世田谷区桜新町2丁目は、都市計画法で準工業地域に制定されています。準工業地域は、中小企業の工場などものづくりが行われている街ですが、同時に戸建やマンションなどの住宅も建てることが出来ますし、病院や学校、商業施設などの様々な用途の建物を建てることが可能な地域です。桜新町は特に、ものづくり事業所と住宅が共存する『住工共生まちづくり』を推進しており、ものづくりを身近に感じられる街になっています。桜新町を含め、準工業地域に自宅がある場合は、店舗兼用住宅や店舗併用住宅を建てることが出来ないので、リフォームの際には注意しましょう。また、多用途の建物がある街なので、騒音リスクに備えた防音対策を意識したリフォームを行うことも大切です。
物件を探す際や、リフォームを行う際は、住宅が建つ用途地域の種類を確認して、メリットを活かした家づくりを行いましょう。