
リノベーションで間取りを考えたり、家具のレイアウトを考えたりする際に、施工例やSNSの情報を参考にしている方は少なくありません。間取りにも時代ごとに流行りがあり、流行りの間取りやレイアウトにしたいと依頼される方も多くいらっしゃいます。しかし、流行り=快適な暮らし、ではありません。人気に便乗した結果、後悔している方の声も耳にします。また、大規模リフォームをしたばかりにも関わらず、すぐに使い勝手が悪いことに気付いて、他のリフォーム会社や設計事務所に間取りのプランを依頼するというケースもあります。
使い勝手が良いと人気がある一方で後悔を招いてしまっている間取りがあるのはなぜなのでしょうか?数多くの間取りやレイアウトを提案してきた間取りのプロが、後悔している方の原因やその解決策に関して解説したいと思います。
1. 人気なのに後悔も多い間取り
流行りの間取りであるにも関わらず、後悔をしている方が多いことには理由があります。どのお宅にとっても良いとは言えない理由や、その解決策をプロの目線で解説いたします。
■移動距離が長すぎる回遊導線
回遊導線がある家、特に水回りをまとめて回遊導線が出来れば家事導線が良くなると人気です。しかし、回遊導線を優先しすぎた間取りにした結果、後悔を招いているケースは少なくありません。
家事効率を考えて回遊させるためには、家事のメインとなるキッチン・洗面所・浴室の3部屋が繋がるようにする必要があります。さらに、パントリーやランドリールーム、脱衣所などの収納や家事室もプラスすると6部屋以上の空間を近くに配置する必要が出てきます。しかし、実際の家事ではそれらの部屋を毎回通り抜ける必要はないため、回遊することで、ただただ移動距離が延びしまっていることがあります。むしろキッチンを中心にそれぞれの部屋を最短距離で行けるように配置した方が家事導線は短くなる場合は少なくありません。
しかも回遊できるために部屋をつなげると、大抵の間取りでは長い廊下が出来て、細長い家になってしまいます。回遊することばかり意識した結果、それぞれの部屋に十分な広さが確保できないことも多くあります。各部屋にドアが2つ必要となり、収納スペースを圧迫してしまっていることもあります。
実際に、リノベーションで間取りの打ち合わせに難航していた方が、回遊導線にこだわらない間取りにした途端、十分な収納が確保できたり、実用的で導線が短くなったりするケースはよくあります。こだわるべきは回遊できるかどうかではなく、導線を短く出来るかどうかを意識した間取りにしなければ家事導線の良い家にはならないかもしれません。
■片付きそうで片付かないファミリークローゼット
家族全員の洋服をまとめて収納する『ファミリークローゼット』を設けることは大容量収納の確保や、片付けがしやすい間取りとして人気です。狭小住宅では特に、クローゼットをまとめることで省スペースになり、導線が短くなったり、ランドリールームやパントリールームと兼用できたりすることにメリットを感じ採用する方が増えています。しかし、一方で後悔している方も少なくありません。
2人分のクローゼットであれば、まとめてもスペースはそれほど必要ないかもしれませんが、3人以上の衣服になると、最低でも3畳以上は必要になってきます。しかも洋服が取り出せるように通路幅も確保しなければいけません。それぞれ1畳ずつであれば取り分けやすいスペースでも、3畳以上を家の中で確保しようとすると、間取りが限られてしまうかもしれません。また、朝など着替えの時間に出入りが多く渋滞してしまったり、それぞれの寝室から遠かったりして後悔しているお宅もあります。
さらに、家族が多い家では、クローゼットをまとめたことで片付けをする人が限られてしまい、自分の物を片付ける習慣が身に付きにくいというデメリットもあります。子供たちが自分のものは自分の部屋に片付けたり、ルールを自分で決めて整理整頓したりすることが大切だと感じて、その習慣が自然に身に付くように各部屋にクローゼットを設けて正解だったという親御さんも少なくありません。
各部屋にクローゼットを確保できるのであれば、あえてクローゼットをまとめることにメリットは少ないかもしれません。
2. 流行りのレイアウトには注意がいっぱい!?
間取りがどんなに良くても、家具のレイアウト次第で、使いづらい家になってしまうことがあります。そのため、リノベーションした後ではなく、プラン段階で間取りとセットで考えるべきです。早い段階で注意して家具のレイアウトを決められるように、後悔例と解決策をご紹介したいと思います。
■並べてもメリットが少ない横並びダイニング
キッチンとダイニングテーブル横並びにつながるようにレイアウトする『横並びダイニング』はオシャレな家のレイアウトとして人気です。しかし、キッチンのサイズとダイニングテーブルのサイズによっては横幅が長くなりすぎて、キッチンの対面側にぐるりと周る距離が遠くなってしまい不便さを感じているという失敗例は少なくありません。
そもそも、横並びダイニングが人気の理由は、作業場が狭いキッチンでも横にスライドするだけでダイニングテーブルでも調理が出来たり、食材を置いたり、家族と並んで料理が出来たりする点にあります。また、食事の際に、配膳や片付けがしやすいというメリットもあります。しかし、キッチンの幅がW2700mm以上のキッチンや対面カウンターがあるキッチンでは、調理スペースを既に十分確保できているケースが多く、調理中にテーブルを使うことはないかもしれません。調理スペースが広ければ広いほど使いやすくなるわけではなく、むしろ家事導線が長くなってしまうこともあるので注意が必要です。
さらに、横並びダイニングをオシャレに見せるためには、キッチンの奥行と同じ幅のテーブルをレイアウトして直線的にスッキリと見せることが重要です。そのため、テーブルのサイズや形状がある程度固定されてしまいます。家族の人数の変化に合わせてテーブルを変えたくても見栄えの良さやレイアウト出来る広さを考えると、選択肢が少なくなってしまうかもしれません。
横並びダイニングにすれば導線が必然的に良くなるというわけではないので、横並びダイニングのレイアウトを優先させる前に、自分の家ではどれぐらいのキッチンスペースやテーブルの広さが必要なのか、まずは単体で考えてみましょう。それぞれ十分な広さが確保できている場合は横並びになるようにレイアウトしても、キッチンとテーブルの間に通路がある方が使いやすくなるかもしれないので、十分な通路幅をとれるかどうかも確認しましょう。
■ベッドが入らない子供部屋
最近はリビング学習や、子供が幼いうちは主寝室に家族全員で寝るスタイルのお宅が多くなり、子供部屋を作らなかったり、広く取らなかったりするお宅が増えています。しかし、子供の成長に伴って、それぞれが個室で寝るようにしたいという要望が出てきても、ベッドが置ける広さの子供部屋が無いため早い段階で間取り変更のリノベーションが必要となるケースは少なくありません。
また、将来的にベッドを置く予定で広さを取り分けたはずの子供部屋でも、平面図上で必要な面積を確保していただけで、実際にベッドを置くと、部屋のドアやクローゼットのドアの開閉スペースを確認していなかったせいでドアを開け閉めできず寝室としての役目を果たせないこともあります。
さらに、子供部屋内でベッドを組み立てる広さが無かったり、組み立てた状態では廊下やドアを通過できなかったりするケースもあります。ベッドを諦めて布団にするにしても、布団を片付けるための押し入れが無いために、常に片付かない、散らかって見える部屋になってしまうこともあります。勉強机とベッドは置けても、必要な本棚や勉強道具や学校の荷物を置くスペースが確保できておらず、実用的ではない部屋になっているお宅もあります。
子供の成長を考えた子供部屋を作る場合には、ベッドを含め、成長に伴って必要となる家具のレイアウトや搬入方法も想定したうえで考えましょう。
3. まとめ
使い勝手が良くオシャレと言われる流行りの間取りやレイアウトにリノベーションしても、後悔を招いているケースは少なくありません。例えば、回遊導線や横並びダイニングにこだわったせいで、家事導線が長くなってしまったり、ファミリークローゼットにしたことで、間取りが限られたりすることがあります。また、子供たちの成長を想定した家具のレイアウトを意識しなければ、実用性のない子供部屋を作ってしまうこともあります。
流行りの間取りであれば後悔しづらい家に出来るというわけではないので、自分の暮らしに合った間取りやレイアウトを意識してリノベーションをしましょう。