間取りを考えるうえで広さやレイアウトだけではなく、動線を考えることは重要です。開放的でゆったりとした広々空間は快適ですが、家や部屋が広くなれば広くなるほど動線は長くなってしまいます。そのため、動線を考えずにレイアウトした間取りは、家事や生活がし辛い家になってしまうかもしれません。
暮らしやすい家にするために、スムーズな生活動線や家事動線のある間取りにするにはどうすれば良いか、ご説明したいと思います。
1.動線を正しく理解して考えよう!
そもそも動線とは何でしょうか?生活動線と家事動線にどんな違いがあって、間取りを考える際に、動線がナゼ重要なのか、どんな落とし穴があるのかを確認してみましょう。
生活動線&家事動線とは?
間取りを考える時に確認すべき『動線』とは、そこで暮らす人たちの移動経路を線で表現したものです。さらに、暮らしやすさ、家事の時短を考えるなら、生活動線と家事動線に注目することが大切です。
生活動線とは、生活上で特に行き来する経路で、日常的、習慣的に使うリビングやダイニング、トイレやお風呂など生活に欠かせない動きを結ぶ経路です。
家事動線とは、生活動線の中でも特に家事を行うために移動する経路を結ぶ線を指しています。
生活動線も家事動線も図面上で経路を繋いだ時に、線がシンプルになれば、家の中をスムーズに動けている証拠となります。反対に複雑になったり、何度も行き来しなければいけなかったりしている場合は部屋のレイアウトを変えるなど改善すべき部分だと言えます。
図面で判断しづらい動線の落とし穴
図面上では動線を確保出来ていたつもりだったのに、実際に完成した家で生活してみると、思っていたような動線ではないという時があります。その理由の多くは、図面上に家具を配置していなかったり、ドアの開閉向きを気にしていなかったりしたことが原因かもしれません。
特にLDKのような広い空間では、図面上では通路が確保できているつもりでも、家具を置くと空間に凹凸が出来て、直線的に歩けなくなることがあります。そもそも家具を置くことで、通路が無くなる場合すらあるかもしれません。また、ドアの開閉向きによっては、家具が置けなかったり、スムーズに通り抜け出来なかったりして動線の妨げとなることがあります。
動線を考える際には、図面上に必要な家具をレイアウトしてから動きがスムーズになるかを確認しましょう。
2.生活動線と家事動線をスムーズにする間取りのポイント
動線の確認の仕方が分かったところで、実際に間取りを考えるうえで、動線のどんな点を意識すると良いのでしょうか?スムーズな動線にするためのポイントをご紹介したいと思います。
水回りが近い=家事が時短出来る わけではない!?
家事動線を短くするために、家事の中心となる水回りを近くすれば良いと思って近づけたり、出来るだけひとつにまとめたりするレイアウトにする方は少なくありません。しかし、実際には水回りが近ければ家事動線が短くなるわけではありません。水回りと言われる部屋でも、家事の中ではそれほど足を踏み入れない部屋もあるからです。
例えば、ボタンひとつで全自動になる洗濯機は、一度ボタンを押せばその後は頻繁に近づく必要はありません。そのため、洗濯機のある洗面所とキッチンが近くても、家事動線がスムーズになる、家事の時短につながるわけではないのです。洗濯という家事と、料理という家事は動きや頻繁に使う場所が異なるからです。水回りを近づけるという考え方ではなく、家事の分類ごとに動線を短くする、スムーズな流れになるようにすることを意識しましょう。
洗濯の動線を考えるなら、脱衣所で服を脱ぐ、洗濯機で洗う、バルコニーに干す、和室で畳む、クローゼットに収納する、というように水回りとは関係ない空間を行き来することになります。図面に洗濯動線をペンで書いてみましょう。どの部屋を近くにしたり繋げたり、まとめたりすれば動線を短くできるか、どこにドアや廊下があればスムーズになるかが分かりやすくなります。洗濯以外にも、料理や掃除など家事の分類ごとに、この方法でチェックすれば短くすべき家事動線が見えてきます。
家族全員の生活動線を確認する!
家事の時短に繋がるため家事動線を考える方は多いですが、家事動線に比べて生活動線を意識する方は少ないかもしれません。しかし、生活動線は家事動線と交差する部分が多いので、両方の動線を確認しておくことが重要です。
特に、家事を行う人だけではなく、その家に暮らす人全ての生活動線を一度確認しておきましょう。家事動線が短くスムーズでも、他の家族の生活動線が重なるタイミングが多かったり、時間によって家族の動線が何人も重なったりしてしまうと、スムーズな動線ではなくなってしまいます。
例えば、朝の身支度を整える時間は洗面所に家族が集まるため、洗面所とキッチンやランドリールームが近いと家事がスムーズに行えないかもしれませんし、廊下に洗面化粧台があると生活動線の妨げになるかもしれません。洗面所を家事動線と重ならない位置に設けたり、1階と2階に洗面化粧台を設けて家族が分散して使えるようにしたりすることで、家族の暮らしやすさと家事のしやすさ両方を叶える動線に出来ます。
家族の生活動線を書き込み、重なっているところはそれぞれの時間も確認しておくなら、よりスムーズに動けるレイアウトの間取り見つけられます。
3. まとめ
間取りを決めるうえで、そこで暮らす人たちの移動経路を線で表現する『動線』を意識することは大切です。特に習慣的に使う経路である『生活動線』と、家事のための経路である『家事動線』がシンプルになるように間取りを考えるなら、暮らしやすく家事がしやすい家になります。図面に動線を書き込んで考える際には、家具のレイアウトを決め、ドアの種類や開閉向きも確認しながら、動線が確保出来ているか、スムーズに動けるかを確認しましょう。また、家事の分類ごとに動線を確認することや、家族全員の生活動線を確認することも大切です。
生活動線と家事動線を確認することは、自分の暮らし方を見直す機会にもなり、より快適な暮らしが出来る間取りにするうえで効果的です。