地震対策=耐震、をイメージする方は少なくありませんが、地震に備える方法には、耐震以外にも制震と免震があります。命や家を守るうえで、出来るだけのことを行いたいと耐震リフォームを考えておられる方は、耐震以外の方法も知って取り入れることで、より安全で安心な家にすることが出来ます。
ここでは『制震』にスポットをあて、耐震との違いや、制震の重要性、どのようにリフォームで取り入れることが出来るかを、ご説明したいと思います。
1.小さな揺れでも蓄積すれば家にとっては大きなダメージ
大地震に家が耐えたから、小さな地震にしか遭っていないから大丈夫と思っている方は少なくありません。しかし、小さな揺れでも家には影響があります。家を地震に備えるうえで耐震と制震の違いを知っておきましょう。
耐震と制震は違う!
『耐震』とは、その名の通り地震に耐えること、『制震』は地震の揺れを制御する、抑えることです。
耐震の場合は、筋交いを入れたり、耐震金具を取り付けたりして建物を丈夫にし、地震に耐えられるようにします。対して制震の場合は、制震装置を使って揺れを吸収することによって、揺れそのものを抑え建物への損傷を防ぎます。
耐震と制震は地震時の揺れに対する働きが違います。
耐震+制震で地震に備える!
耐震設計の建物は強度を高め倒壊のリスクがないものの、地震発生時に建物が揺れます。しかし、目に見える被害が出ていなくとも、揺れによって少なからず建物の構造部分や設備に負荷がかかっています。小さな地震でも繰り返し起こったり、大きな地震後に余震が続いたりしてしまうと、負荷が蓄積され破損や倒壊の危険があり、耐震性は徐々に下がってしまいます。揺れによる影響を考えると、耐震性だけではなく、揺れを吸収し逃すことが出来る制震性があれば、小さな被害を蓄積せずにすみます。
大地震に備えて建物を強固にする耐震だけでなく、小さな揺れも吸収し抑制する制震の両方が備わった家にすることで、さらに安全な家にすることが出来ます。
2.制震リフォームって出来るの?
地震に備えて耐震リフォームについては頻繁に耳にするかもしれませんが、制震リフォームは聞いたことがない方は多いかもしれません。新築以外でも制震施工は出来るのでしょうか?制震リフォームの方法をご紹介したいと思います。
蓄積ダメージに備える制震リフォームとは?
多くの木造住宅で制震性を上げるための制震リフォームを行うことが可能です。ただし、施工内容に関係なく、地震に備えたリフォームのことをまとめて耐震リフォームと呼んでいる会社は少なくありません。そのため、制震も取り入れたいと思う場合は、リフォームを依頼する際に、耐震と制震どちらも行いたいことを伝えるようにしましょう。
具体的に制震リフォームの方法としては、制振装置として『制震ダンパー』を設置するという方法があります。制震ダンパーは設置条件の制約が少なく、施工費用も比較的安価に抑えられるというメリットがあります。また、フリーメンテナンスで繰り返しの地震にも対応出来ます。
制震ダンパーは木造在来工法だけではなく、ツーバイフォー工法の家でも使用することが可能です。また、地震だけではなく、台風の際の強風や交通振動のような微振動にも対応し、家への負担を軽減出来ます。
耐震診断・制震診断で必要な補強を把握する!
耐震リフォームも制震リフォームも行う場合は、まずは家の状況をしっかりと確認しておくことが大事です。そのため、リフォーム会社や専門家に家の調査を依頼して現状の耐震性や制震性を診断してもらいましょう。
悪質リフォーム業者の中には、屋根裏や床下だけを覗いて耐震リフォームをすべきだと伝えて、施工をする業者もいますが、地震に対する家の状態を診断するためには、図面と照らし合わせながら家屋調査を行い、柱や壁の量や位置、建物の面積、重量に基づいて地震力の吸収率を計算するなど、細かな診断が必要です。さらに、その診断に基づいて、どこにどんな補強や装置が必要か、補強計画が行われたうえで工事を行います。そのため、調査してその場で、すぐに耐震リフォーム内容を伝え、契約を迫るような業者には注意が必要です。
診断書や計画書を確認したうえで、適切な箇所に適切な方法で補強を行ってもらうようにしましょう。耐震性は法律で基準が定められているので、基準を満たしていない場合は、まずは耐震補強を行ったうえで制震装置の設置を行うことになります。既に耐震基準を満たしており、問題がなければ制震リフォームのみを行うことも出来ます。
3. まとめ
建物の地震対策には、耐震以外にも制震や免震という方法があります。耐震は建物を丈夫にして地震の揺れに耐えられるようにするのに対し、制震は揺れを吸収し抑制することで建物への負荷を防ぎます。耐震のみでは、大地震後の余震や繰り返しの地震で、蓄積ダメージを受け耐震性が下がり、損傷や倒壊のリスクが高まってしまいます。そのため、耐震性を下げないためにも耐震にプラス制震を備えることでより安全な家に出来ます。築年数の古い家であっても、専門家による耐震診断を行い、補強計画を行ったうえで、制震ダンパーなどの制震装置を設置することで制震リフォームを行うことが可能です。
命を守るために、耐震だけではなく制震リフォームも行い、地震による蓄積ダメージから家を守りましょう。